理事長の利益相反取引は,違法?
理事長がおこなう利益相反取引は,違法なのでしょうか。
具体例を挙げます。
例えば,マンションの駐輪場を改造する工事を行うときに,
理事長が代表取締役に就任している会社に工事の発注をする場合。
理事長の善管注意義務に違反して,違法になるのでしょうか。
①仮に工事の内容が値段に相応でない不適切なものであることが立証された場合には,違法になる可能性があります。
②また,理事長の会社が下請けに出した際,多額のリベートを受け取っていた場合には,管理組合に損害が生じたと判断される場合があり,違法になる可能性があります。
このように,①②の事実が立証された場合に違法と認定されうるのであり,必ずしも,必ず利益相反取引が違法となるわけではないです。
場合によっては,他の業者に依頼するよりも格安で工事をすることができたり,
管理組合にとってメリットがある余地も考えられます。
ある事件では駐輪場改造工事で,管理組合側が,
理事長には,「 工事業者の選定に当たっては,きちんとした工事を行う信用があり,かつ,できるだけ安い値段で請け負う業者を選定する義務 」 があると主張し,
利益相反する場合には,事前に理事会に諮った上,理事長以外のものを管理組合の代表者に選任すべきであった,と主張しましたが,
原告が,上記①②の立証をすることができず,
裁判所は原告の主張を採用せず,違法とはいえないと判断しています。
(東京地裁平成18年11月30日判決 この事件では,他にも多くの工事が問題となりました)
ただ,このような利益相反取引は,公正さを担保できていないのではないかという疑念が挟む余地が多くあります。
紛争に発展するおそれがあります。
規模や緊急性にもよりますが,
公募して,入札により,業者を選定するとか,
相見積もりをとって相場を確認するとかするのが,紛争を回避するために懸命な手段でしょう。