管理者の解任請求が認められた事例 裁判例 理事長の解任請求も併せて。
管理者が解任された事例を紹介します。
その前に,若干の用語の説明です。
「管理者」というのは,何でしょうか。
区分所有法上の概念です。
26条で権限が認められており,共用部分・敷地等を保存し,集会決議を実行し,規約で定めた行為をする権利を有し義務を負うものです。そして,区分所有者の代理人でもあります。
かつては,「管理者」として,「管理会社」が就任して,管理業務を行うというケースが有りました。
現在では,標準管理規約を採用し,「管理者」として「理事長」が就任する場合が多いです。
今回紹介する事例では,「管理者」として「管理会社」が就任する場合のケースにおけるものです。いずれも一昔前の事例です。
①東京地裁昭和53年1月26日
②東京地裁平成2年10月26日
両方の事件で,解任請求が認められました。
解任できる場合はどのようなときでしょうか。
区分所有法25条2項では,「管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるとき」です。
上記事例では,いずれも,管理会社が行うべき管理業務を怠っている事例です。
管理業務を怠ったことが「職務を行うに適しない」と判断されています。
①では,清掃業務,エレベーターの補修,地下・屋上の貯水タンクの清掃,破損した消火用ホースの交換,駐車場の漏水,テレビ用共有アンテナ・電気室のモニターの補修などを怠っていると判断されています。
②では,被告が区分所有者でもある事例です。元々の分譲業者でした。従業員が不在がちになったり,除雪・水漏れ対応がおろそかになり,併せて,管理費等の支払も怠っており,区分所有者との信頼関係がもはやない,と判断され,「職務を行うに適しない事情がある」と判断されました。
なお,
似た事例で,理事長について解任請求する事件があります。
同じ管理者を解任するという点では似ていますが,管理者として,組合員である理事長が就任している類型です。
解任請求が認められる事例はあまりみません。ほぼ棄却ないし却下されています。
これらの特徴としては,修繕工事などお金にまつわることが原因であることが多いです。
修繕工事では,マンション内の対立する考えが衝突することが少なくありません。
修繕する必要がない,もっと安くできるはず,と考えている人の意見が反映されないときに,もっと安く必要最小限にできるはずであると,主張して,ひいては理事長の解任請求までに至る場合が良く見受けられます。
解任請求に至る以前に,総会の決議などで十分に議論をして,納得して,修繕に及ぶ,というのが理想的であり,紛争の解決に役立ちます。遠回りのようで近道だったりします。