破産者に対する未納管理費の請求 理論上の話ですが
マンションの管理費を滞納している人が破産した場合,マンション管理費を請求できるでしょうか。
管理費等請求が破産債権であれば,破産(免責)によって,支払わなくてもよくなります。
破産債権であれば,請求することはできません。
ただ,理論上,厳密にいうとそうでないので,今回はその話題です。
破産債権であれば,免責されるといいましたが,
破産債権とはどういうものでしょうか。
破産者に対して「破産手続開始決定前」の原因に基づいて生じた財産上の請求権です。
マンション管理費でいうと,破産開始決定があった日までに発生していた管理費については,破産債権になります。
込み入った話になりますが,「財団債権」というものも免責許可決定により免責されます(管財人が就任している事件に限ります)。
破産手続では,破産者が所有するマンションは財団に組み込まれ,マンション管理費は財団債権になります。なので,マンションが売却されるか,手続から放棄されるまで,その間に生じた管理費については,「財団債権」であり,免責されます。
逆にいうと,破産債権や財団債権に含まれないマンション管理費であれば,たとえ破産者であっても,支払う義務はあるのです。
具体的にいうと,
「破産開始決定後,このマンションの所有権が財団から放棄された以後発生するマンション管理費」
については,免責されないので,請求することができます。
破産手続には同時廃止事件というものもあります(管財人が就任しない事件)。マンションの所有権をもっていたとしても,マンションの価格が確実に抵当権の価格よりも低い場合には,いわゆる「オーバーローン」として,はじめから財団に組み込むことはせず,換価の手続を経ずに破産手続を終わらせてしまう場合です。
その場合には,
「破産開始決定後に発生する管理費」
については,免責されないので,請求することができます。
ただ,いずれにしても,管理組合としては,特定承継人に対して,元所有者の滞納分を請求することができます。あえて資力が乏しそうな破産者に対して請求する必要はないでしょうから,そういう理論上の話がある,と考えておいてかまわないと思います。
なお,若干事例はことなりますが,裁判例があります。
財団放棄後の管理費については,破産者は支払わなければならない,と判断された裁判例です(東京高裁平成23年11月16日判決)。
被告の反論として,権利濫用である,信義則違反である,と主張しておりましたが,認められませんでした。立法論としては,傾聴に値するとはいわれていますが。
この事例の原告というのは,競売の競落人です。管理組合に管理費を支払ったあとで,破産者に対して,求償権を行使した事例です。