競売請求訴訟 滞納マンション管理費回収までの長い道のり③ ~ 無剰余による競売手続の取消し?
競売請求訴訟で勝訴判決を得ることができたならば,速やかに競売を申し立てる必要があります。当該勝訴判決が確定した日から6か月を経過すると競売の申し立てができなくなってしまうからです(区分所有法59条3項)。
現在ではこのような事態はありませんが,以前はこのような競売申立に対して,裁判所が「競売手続を取り消す決定」をしたことがありました。剰余を生じる見込みがない,というのがその理由です(民事執行法63条2項)。せっかく苦労して競売請求の認容判決を得たにもかかわらず競売をすることができないという,やるせない判断です。これでは区分所有法59条の制度は骨抜きです。結果的に,高等裁判所で,地方裁判所による競売手続の取消決定は不適当であったという判断がなされました(東京高等裁判所平成15年(ラ)第1613号,原審千葉地方裁判所松戸支部平成15年(ケ)第169号)。
競売請求訴訟で勝訴し,競売手続を無事開始させることができたとしても,この手続も直ぐには終わりません。競売手続自体が半年以上の時間が掛かる手続だからです。「競売請求訴訟」という方法でマンションの滞納管理費・修繕積立金を回収するのは非常に長い道のりです。でき得るならば,競売請求訴訟に至ることなく他の手段で回収できればそれに越したことはないですね。