競売妨害に対抗する①~競売請求訴訟の判決確定前の承継人
いわゆる執行妨害の事例で,裁判所のHPに掲載されている最高裁判例(最決平成23年10月11日・平成23年(ク)第166号,平成23年(許)第8号)をご紹介します。
事案の概要は以下のとおりです。
管理費を滞納している債務者(区分所有者)に対し競売請求訴訟(区分所有法第59条)を提起し,無事,勝訴判決を取得しました。 しかし,この債務者は,当該判決の確定前に,マンション(区分所有権)の一部(5分の4)を売却していました。そこで,管理組合は,5分の4の持分については買主(被告からマンションを買い受けた区分所有者)を債務者として,競売請求の判決に基づいて競売を申し立てました。ところが,裁判所は,この買主が有する5分の4の部分についての競売申し立てを却下しました。ちなみに,債務者(売主)の持分分(5分の1)については競売開始決定が下されました。
こういう事案です。債務者は,競売請求訴訟の口頭弁論終結後,判決確定前に所有権を譲渡したのでしょうか。管理組合は競売妨害のためだと考えました。
実は,買主といっても全くの第三者ではなく,債務者を取締役,債務者の弟を代表取締役とする会社でした。他に役員はいません。この会社の設立は競売請求訴訟提起後で、しかも経営の実態がないという事情もありました。その上,債務者が売却したのがマンションの全部ではなく一部(5分の4)でした。売却後は共有になりますが,共有になると、競売手続で入札する人や入札される金額が減るともいわれています。真実は分かりませんが,債務者,買主側から合理的な説明はされていないようですし,これらを見る限り競売妨害と判断せざるを得ません。
裁判所の判断はどうでしょうか。執行妨害かどうかは別に,執行裁判所は,必要な書面が備えられていないということで却下します。執行裁判所の審査は書類が整っているか否かを判断する形式審査で,実体(競売妨害か否か)に踏み込んだ審査をしないからです。なお,必要な書面は何かというと,買主に対する競売請求訴訟の判決か既に取得している判決の承継執行文です。
概要は以上ですが,興味深い点があるので,又の機会にコメントします。