競売請求訴訟 滞納マンション管理費回収までの長い道のり① ~手続面
滞納しているマンション管理費・修繕積立金を回収する方法の一つに,「競売請求訴訟」があります。この訴訟で勝訴判決を取得するためには,当然のことながら区分所有法59条の要件を満たす必要がありますが,そもそもこの訴訟を提起するにあたっては,これに先立ち,いろいろと踏まなければならないステップ(手続的要件)があります。なかなか長い道のりです。
まず,管理組合総会において,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成決議が必要となります(区分所有法59条2,58条2項)。区分所有者及び議決権の各4分の3という数字は,なかなかに高い割合です。規約の改正並です(区分所有法31条1項)。管理組合総会は年1回開催が通常ですので,場合によっては臨時総会の開催が必要かもしれません。
この管理組合総会に先立ち,滞納者である区分所有者には「弁明する機会」を与える必要もあります(区分所有法59条2項,58条3項)。この弁明の機会を付与したことを立証するため内容証明郵便でお知らせすることが必要となります。
弁明の機会を付与した結果,決議前の総会席上で,或いは,総会開催前に弁明が出ることももちろんあり,弁明が出てくるようであれば,内容にもよりますがこれを直ちに無視するわけにはいきません。例えば,分割払いの申出があれば,それに応じるかどうかの検討が必要となります。弁明が全くない,或いは,弁明があって不合理なものでやむを得ないと判断する場合には,訴訟提起を決議することになります。
管理組合総会開催にあたり求められる招集通知等の一般的な手続はもちろん,区分所有法59条が求める特別な手続をもきちんと踏んでおかないと,後々,手続的な不備を指摘され足下をすくわれかねませんので十分に注意が必要となります。