相続人不存在。滞納マンション管理費回収と相続財産管理人。
マンション管理費・修繕積立金を滞納している方がお亡くなりになっていた,という場合もあります。
そのうえ,相続人が「すべて相続放棄」をしたという場合もあります。「相続人が不存在」の場合です。このようなときには,どのようにすればよいのでしょうか。
いくつか方法はあります。
①相続財産管理人を選任する方法。
②破産を申し立てる方法。
③その他 (訴訟を提起,競売を申し立てる方法。)
①相続財産管理人
家庭裁判所に申し立てます。相続財産管理人を選任してもらいます。
その管理人が財産を換価したりして,そのなかから滞納管理費等を回収します。
申立てるためには裁判所に予納金を納めなければなりません(管財人の活動費です)。東京家庭裁判所の場合,現金・預貯金など流動的な資産がある場合には20万円程度でよいのですが,そのような資産がない場合には,80万円から100万円必要です。仮にマンションが高額で売却できた場合には,予納金を回収することもできます。ただし,一旦は80万円以上納めなければならず,予算を組んで捻出するには慎重な判断を要すると思います。
②破産申立
仮に債務者が債務超過に陥っているなどの場合,管理組合が利害関係人(債権者)として,破産を申し立てることもできます。東京家庭裁判所民事20部の場合,予納金額は最低でも50万円必要です(管財人の報酬になります)。その他に印紙・切手代が約34,000円くらいです。
債務超過かどうかを立証しなければなりませんが,手がかりがあるとすれば,相続放棄の申述申立書に記載された情報がひとつ可能性としてあり得ます。
この場合も,予納金の捻出が必要です。
③その他(訴訟提起・強制執行)
結論として,この方法は採ることはないと思います。
訴訟提起について
被告(債務者)がいません。なので,被告については裁判所に「特別代理人」を選任してもらいます。原告(債権者 管理組合)が提訴と同時に特別代理人の選任を申し立ててます。特別代理人の選任のために予納金が必要です。いくら必要かは結局は裁判官の判断によるところになり不明確です。東京地裁の場合,おおよそ,簡単な訴訟の部類と考えられれば,10万円というのが相場です。
強制執行について
債務名義(判決)を取得したとして,これを根拠に強制執行手続になりますが,ここでも,債務者がいません。なので,今度は債務者について裁判所に「相続財産管理人」を選任してもらわなければなりません。①と同様です。
結局③の方法は,迂遠な結果になりますので,理論上あり得るというだけであり,実際上は①の方法であれば足りる場合がほとんどだと思われます。
このように,非常に面倒な手続がまってます。しかも,かかる費用が安くない。しかも,いくらかかるか裁判官の判断によるところで不明瞭で(困りますよね),予算を組みにくい。多めに予算を組むことになると思います。
他の抵当権者が相続代理人を選任してくれれば,その手続に便乗することができるので,このやり方の方が賢いやり方でしょうが,仮に他に抵当権者がいなければ,自ら申し立てる必要があります。