マンション問題解決の手引き

弁護士がマンションで起こる様々な法律問題を解決します

近時,マンションでは様々なトラブルが発生し,弁護士が対応した方が良い事例も増えてきております。そこで,本サイトでは,弁護士への相談が特に多い管理費・修繕積立金の滞納問題を中心に,ペット問題,迷惑行為(悪臭,騒音…)問題など様々なテーマを取り上げていこうと思います。本サイトが,ご覧頂いている皆様が抱えている問題解決の一助になれば幸いです。

マンションにまつわる様々な法律問題のご相談も承っております。お気軽にご連絡下さい。弁護士加藤の無料相談サイト】はこちら

お問い合わせメール   電話:03-6661-0993

弁護士 加藤貴士



判断能力の低下と議決権行使

 突然ですが,「成年後見制度」という制度をご存知でしょうか。

 成年後見制度とは,成年後見人等による適正な財産管理を通じて,例えば,認知症などで判断能力が低下した方々(の財産など)を保護しよう,という制度です。成年後見人に管理してもらう側の方については成年被後見人と呼びます。成年被後見人の中には,マンションを区分所有している方々もおりますので,マンションの管理組合も成年後見制度と無関係ではいられません。 

 築年数を重ねていけば,マンションの老朽化が進行するだけでなく,新築当初から区分所有している方々の高齢化も必然的に進んでいきます。成年後見制度を利用している区分所有者であれば問題は起こってきませんが,必ずしも成年後見制度を利用されている場合だけではありません。その為,マンションの大規模修繕や建て替えといった重大な問題と,高齢者の判断能力の低下という問題が重なる事態も想定されます。 

 問題となるケースはどのような場合でしょうか。

 それは議決権を行使する場面です。認知症などで判断能力が欠けていたとしても,成年後見人が就任している場合は,当該成年後見人が議決権を行使することから問題はありません。問題なのは,判断能力が欠けているにもかからわず,成年後見人がついていない状態で,議決権が行使されたしまった場合です。当該議決権の行使は無効となってしまいます。

 例えば,建て替え決議をする場合,区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数の賛成が必要となりますが,決議要件をクリアしていても,それがギリギリであったような場合には,当該議決権の行使が無効となってしまうことにより,決議要件の5分の4を下回ってしまう結果,遡って建て替えの決議自体も無効になってしまうのです。

  実際の紛争で想定されるのは,議決権を行使した時点(或いは,代理者選任届けを提出した時点)で,本人に判断能力あったかどうか,でしょう。

  実際の裁判でも,認知症の疑いのある区分所有者が代理者選任届を作成・提出した約半年後に後見開始の申立てがなされ,その翌月に代理者が建て替え決議で議決権を行使し,その更に翌月に成年後見人が就任したという時系列で,代理者選任届を作成した時点で,当該区分所有者に判断能力があったのか,がメインではありませんが一応争点となった事件があります(東京地裁平成24年12月27日判決・判例時報2187号51頁)。

 このケースでは,意思無能力であったと認めるに足りる証拠はなかったとして(意識のはっきりしていない時間は増えてきていたが,意識のはっきりしている時に,代理者選任届を作成した,という主張が認められ),当該代理者による議決権行使の効力に影響はないと判断されています。

 ポイントはどこにあるのでしょうか。

 相続・共有の場合と同じく,やはり情報(成年後見人がついていなか等)収集がポイントとなると思われます。

 建て替え決議に至る迄には,たくさんの方が関係し,それぞれの方が建て替えに向け膨大な時間を掛けていることが通常です。せっかく賛成多数で決議されたにもかかわらず,区分所有者の判断能力が欠けていたがために一転決議が無効にされたのでは,それまでの努力が報われません。判断能力(意思能力,事理弁識能力)の有無は微妙な判断がつきまといます。こと裁判での争いは避けたいところです。この点は,準備段階の時点から考慮・配慮すべき事項といえるでしょう。

 

マンションで起こる様々な問題のご相談も承っております。
お気軽にご連絡下さい。(営業・宣伝はお断りしております。)

【弁護士加藤の無料相談サイト】こちらをクリック

メール:こちらをクリック 電話:03-6661-0993

にほんブログ村 住まいブログ マンション管理へ
にほんブログ村
にほんブログ村 住まいブログ マンション管理・経営支援(業者)へ
にほんブログ村

マンション管理 ブログランキングへ