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弁護士 加藤貴士



共有の場合の議決権行使 相続問題と建て替え問題

 区分所有権が共有状態にある場合の議決権行使に関する話題です。

  そもそも,どのような場合に区分所有権が共有状態となるかですが,例えば,夫婦でマンションを購入し,夫婦共有名義とする場合や,死亡した単独の区分所有者の相続人が複数いる場合が挙げられます。

 マンション建築から長期間経過し出てくるのは後者の場合ですが,築年数の経過がもとらす問題としては,区分所有者自体の問題としての相続の他に,マンション自体の問題として老朽化(マンションの建て替え問題)が挙げられ,今後は,相続問題,老朽化・建て替え問題は併存する場合が多くなると想定されます。

 実際,建て替えに関する訴訟においても,相続絡みの共有者による議決権の行使は問題となっております。 

 組合を運営する立場からみて大切なことは,まず情報の収集です。どの部屋で相続が発生したのか,相続人は何人か,誰なのか,その情報の収集が大切です。プライバシーの問題はひとまず置くとして,これは日頃から定期的に確認しておくことが必要となります。

 次に大切なのが,共有者の内の1人が代表者として議決権を行使する場面での手続の整備です。特に,建て替え問題の場合,区分所有法では区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数決議が必要となっておりますので,票勘定は大切なポイントとまります。

  全共有者の署名押印のある書面が提出してもらうのが一番望ましいのでしょうが,被相続人の亡くなられた時期,共有者間相互の人間関係,その他の諸事情から,同書面の提出が難しい場面も十分に想定されるところです。管理組合規約上の定め,理事会での取り扱い,運用などについて,遠い将来,或いは,近い将来における(建て替え)決議に向け,改めて確認しておかれることをお勧めします。 

 1つ,実際の裁判例(原告はマンション建替組合,被告は建て替えに反対する区分所有者)を紹介しておきます。本件は,議決権行使当時,共有者全員の署名押印はなく,代表者の署名押印しかない文書(本件の管理組合では「代行者選任届」というタイトルの文書)が提出されただけで,代表者(代行者)による議決権が行使された事案で,この代表者(代行者)による議決権の行使が無効ではないか(建て替え決議の事例),がメインではありませんが一応争われました(東京地裁平成24年12月27日判決・判例時報2187号51頁)

 本件管理組合の規約では,「住宅が数人の共有に属するときは,当事者間で議決権を行使する者を一人定め理事会の定める書面により組合に届けなければならない。」と規定されており,これに違反するのではないか,と言う形で争われました。 

 ただ,本件管理組合の理事会では,「従前より区分所有者が死亡して相続が開始した後の遺産分割未了の間に,相続人(共有者)らが議決権行使をする場合には,相続人間による協議で議決権を行使する者を選び,同人から代行者選任届(代行者の署名押印のあるもの)を提出させる」という運用がとられており,この理事会の定めた方法に従い,代行者選任届が提出され,議決権の行使がなされている以上,無効とはいえない,と判断されております。

 もっとも、本件事案では,決議後,事後的に,共有者全員の署名押印がある文書(本件の管理組合では「共有代表者選任届」というタイトルの文書でした)が提出されておりますし,そもそも,議決権を行使した者以外の共有者も,代行者選任届提出に際し,代行者が建て替え決議の議決権を行使することを承認している事案だったようです。

 被告が,理事会の運用等にどこまで精通し,争っていたのかは明らかではありませんが,共有者全員の署名押印のある文書(本件裁判例でいう「共有代表者選任届」)さえあれば,この争点にかんしていえば被告に争われることもなかったと考えられます。

 やはり、代表者の署名押印しかない文書(本件裁判例でいう「代行者選任届」)が提出されただけでは、理事会での運用であったとしてもいかにも心許ないと言わざるをえません。当該文書からだけでは、本当に、事前に共有者間で協議がなされ、他の共有者が建て替え決議における議決権行使を承認しているか、は全く明らかでないためです。建て替えを推進する側からすれば、本当に、他の共有者が議決権の行使を承認しているか、他の共有者に対し、決議前に意思確認したいところですし、意思確認できたのであれば、何らか書面の形にしておきたいところです。

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