わかりやすい支払督促の申立(マンション管理費滞納) ⑥異議が出た場合
「支払督促」を申し立てた後に,債務者から「異議」が出される場合があります。この場合,「通常訴訟」に移行することになります。債務者に反論の機会を与えるためです。通常訴訟がどのようなものかについては,詳しいところは別の機会に譲りますが,大きく異なるのは以下の2点です。
① 裁判所に「出頭」の必要があること
② 裁判官を納得させる必要があること
もう少し具体的に解説します。
① 出頭するということについて
通常訴訟,つまりいわゆる普通の裁判と呼ばれている訴訟の場合,平日に裁判所に出向く必要があります。月曜日から金曜日にかけてお仕事をされている方であれば,休日を取得する必要があるかもしれません。書面の郵送のやり取りで終わる支払督促とでは大きく異なります。最初から想定していれば問題ないのですが,まさか異議が出されることはない,という予想していたものの,ふたを開けてみると異議を出されてしまった,ということで慌ててしまうのはよろしくないです。支払督促を申し立てる以上,常に異議が出ることを想定して申し立てるべきです。
② 裁判官を納得させることについて
(少しわかりにくいところですが)原則として,「事実を主張」して,その事実が真実であることを「証拠で証明」する必要があります。具体的には,通常訴訟では,例えば,債務者が管理組合の組合員であるという「事実を主張」することが必要です。この事実が真実であることを「証明」するために,不動産登記情報という「証拠」を取得して裁判所に提出します。債務者が当該マンションの区分所有者であるという登記情報上の記載部分を示します。このようにして,債務者が管理組合員である事実を証明する必要があります。これらのことを裁判所に出頭した上で行っていく必要があります。書面の提出だけで済む支払督促とは異なります。証拠の提出を求められて,慌てて証拠を用意し始めるのではよろしくないです。
最後に,支払督促にすべきか,通常訴訟にすべきかについて
支払督促で異議を出されれば,最初から通常訴訟するよりもタイムロスがあります。なので,債務者の出頭が予想されたとしても,最初から通常訴訟を提起する方がいい,という考え方もあります。しかも,通常訴訟でしかできないこともあります。例えば,将来給付判決を獲得するとか。特に長期滞納者であれば,将来給付判決を取得することに大きな意味がありますので,支払督促で異議が出なそうでも,通常訴訟をするメリットは大きいと思います。