インターネットを利用していないから,インターネット利用料金を支払わなくてもよいか?
マンションの住民が,個別にインターネット回線契約やプロバイダ契約を締結することなくインターネットサービスの提供を受けることができるマンションがあるとします。
そのマンションで,インターネット利用料金と称して,管理組合が区分所有者から,お金を徴収する場合があります。
「インターネット利用料金」として,徴収されたお金はどのように使われるのでしょうか。
①インターネット専用回線やインターネット設備の保守・管理に要する費用
②インターネット接続回線契約,プロバイダー契約に基づき発生する費用
として,使われます。
①については,マンションの資産価値の維持ないし保全に資するものなので,区分所有者が一律に負担するのはわかります。
では,②の費用については,インターネットを利用していない人にとって恩恵はないので,インターネットを利用していないことを理由として,利用料金の支払を拒むことはできるのでしょうか。
広島地裁判決平成24年(レ)150号の事件で,裁判所は,以下の理由から,たとえインターネットを利用していなくても拒むことはできないと判断しています。
理由1
個別にインターネット回線契約やプロバイダ契約を締結せずにインターネットを利用できることは,マンションの資産価値の維持ないし増大に資するので,実際に利用していなくとも利益を受けている。
理由2
仮に利用している人のみに負担させる扱いをすると,一律に取り扱うことができずに生じる問題点(人的・物的コストなど)が生じてしまう。一律に取り扱うことには一定の合理性がある。
理由3
不相当に高額であるといえない。
この問題は,1階の区分所有者が,エレベーターを利用していないことを理由に,エレベーターが一部共用部分であり,その分の管理費等を支払う義務はない,という主張に似ています。
なお,エレベーターに関する裁判例では,
エレベーターが構造上マンションを構成しており,1階居住者が使用することが可能である上,マンション全体の維持・保全のためにはこれが必要又は有用であり,一部共用部分ではないと判断しています(東京地裁平成16年12月21日判決)。