共同の利益に反する行為 管理費滞納ではない事例の紹介 裁判例
例えば,マンション内の電気料金を引き下げ,老朽化したケーブルを更新するために,電気供給方式を切り替える,という内容の議案が総会で決議されたとします。
切り替えるためには,全戸がそれぞれ契約を結び直す必要があります。にもかかわらず,一戸だけ協力しないがために,更新をすることができず,そのために損害が生じた場合,どうすべきでしょうか。
まずは,法的手続に及ぶ前に,説得をするよう試みるでしょう。
それでも,合理的な理由もなく,切り替え協力しない場合は,どのような法的な措置があるのでしょうか。
協力しないことを持って,「共同の利益に反する」行為であるとして,区分所有法59条の「競売請求訴訟」を提起して,解決を図ろうとした裁判例がありましたので紹介します。
結論としては,第一審では,被告の非協力的な行為が「共同の利益に反する」行為と認定され,競売請求を認容しております。控訴の後,和解をしたようです。
詳細については割愛しますが,
若干の非協力的な行為がそのまま「共同の利益に反する」としてしまうと,少数者の意見がないがしろにされるおそれがあるので,難しい問題だと思います。
この件については,被告が以前にも,ケーブルテレビ工事,風呂釜工事,シーリング工事の際にも,非協力的である(裁判になった)という事情があり,裁判所での態度も建設的な議論を通じて問題解決に応じずもっぱら自己の見解に固執し,他の住民と協力する姿勢がない,という事情などがあったようです。
被告の言い分は,業者の営業姿勢が信用できないとか,業者の信用を保証するものがないとかとか,などを理由に切り替えに納得できない,というところにあり,裁判所は,極めて主観的な危惧感の域を出ていないと判断されています。
多数決には難しいところがあります。反対する意見もあります。物事を決するには,メンバーの意見交換が必要ですが,そこには,「共同の利益」という共通目的が必要です。共通目的があれば,議論の結果みえてくる到達点があるはずです。事件の紛争の確信は共通目的の欠如にあったりするのです。