マンション内における防犯カメラの設置・運用の方法(総会決議の種類など)
最近のマンションでは,防犯カメラが新築段階から設置・導入されていることが多いように思えます。
では,新築段階で防犯カメラが設置されておらず,これから設置しようとする場合,管理組合としては,どうすれば良いのでしょうか。
まず,防犯カメラの設置行為は共用部分の変更に該当することから,総会決議が必要となります。
問題は普通決議で足りるのか,特別決議まで必要なのかですが,通常の設置工事であれば「その形状又は効用の著しい変更」(区分所有法17条第1項,標準管理規約47条3項2号)は伴わないでしょうから,普通決議で足り,特別決議を要するケースはほんどないでしょう。
ただ,撮影被対象者のプライバシー・個人情報に配慮する必要があることから,設置場所や,電子的記録の管理や閲覧,開示要件などを,防犯カメラの設置に当たっては予め定めておくことが肝要です。
防犯カメラの運用基準の制定が望ましいことは,警視庁と東京都とが共同して策定された<住宅における犯罪の防止に関する指針>においても明記されております。以下,抜粋です。
「 3 防犯カメラの運用について
(1)共同住宅の防犯カメラを設置及び運用する者は、個人情報を保護するため、防犯カメラの管理責任者を選任した上、防犯カメラの画像から知り得た情報の漏えいの禁止及び画像の第三者への提供の禁止(法令に定めがある場合等を除く。)並びに画像の盗難及び紛失の防止等安全管理の措置等について運用基準を定めるよう努めること。
(2)明確かつ適切な方法で、防犯カメラを設置している旨を表示すること。 」
防犯カメラに関するルールは,「防犯カメラ使用(運用)細則」,「防犯カメラ管理(運用)規程」などといった名称で定められることが多いと思います。
では,これらの使用細則等の制定にあたっては,どういった手続が必要となるのでしょうか。
使用細則については,実は区分所有法上に特段の定めがありません。ただ,その制定・変更に特別決議が必要となる規約で,マンション管理に関する細かな事項まで全て網羅的に定めておかなければならないとすることは現実的でないことから,実際は,管理規約上において,使用細則の制定・変更については普通決議で足りるとされることになります(標準管理規約18条,47条1~3項,48条4号)。
防犯カメラは,共用部分に属するもので,特定の区分所有者,専有部分を撮影する目的で設置されるものでもないことから,規約で制定するまでの必要はないと解されます。
したがって,防犯カメラ設置の総会決議に際し,防犯カメラに関する細則の案文も準備しておき,併せて細則制定の普通決議を経ることになります。
マンション新築時から防犯カメラが設置されている場合には,防犯カメラに関する使用細則も制定されているはずです。お住まいのマンションに防犯カメラが設置されているような場合には,細則があるかないか,あるとしてどういった運用基準を設けているのか,一度確認してみても良いでしょう。
新築時からであろうと,後付けの場合であろうと,区分所有者,外部の第三者からの閲覧・開示・複製提供の請求があった場合には,当該使用細則等に照らし,その請求を認めるかどうかを判断することになります。実際の運用の場面においては,シビアな判断が求められることもあるかと思います。慎重に判断していく必要はあろうかと思います。さらに,実際に請求に応じ閲覧等を許す場合であっても,撮影被対象者のプライバシーへの配慮は怠らないようにしましょう。
最後に,防犯カメラの映像によっては個人を識別し得るでしょうから,当該映像は個人情報といえます。もっとも,管理組合が「個人情報取扱事業者」(個人情報保護法2条3号)に該当することはないでしょうから,個人情報保護法上の問題が生じることは通常はないでしょう。ただもちろん個人情報保護法上の問題がないというだけで,プライバシー侵害などの問題にはなりますので誤解されないよう注意して下さい。