弁護士費用 ~滞納管理費等回収に関する弁護士費用
【 弁護士が受任する滞納管理費等回収事件の特徴・傾向 】
滞納している管理費・修繕積立金がそれほど多額でない場合(滞納期間としては,1年~1年半程度まで),管理組合(管理会社)において自ら裁判外で督促を行ったり,支払督促を裁判所に申し立て滞納管理費等の回収を試みていることの方が多いように思われます。また,このような場合には,滞納金も未だ小額にとどまることから,管理組合による裁判外での督促や裁判上の支払督促により回収が実現する場合も多いように思われます。
しかし,裁判外での督促や裁判上の支払督促を受けてもなお支払を行わず,さらには今後の支払も期待できない区分所有者も残念ながらいます。中には,連絡すらとれなくなってしまうケースや行方知れずになってしまうケースもあります。
弁護士のところに来る案件の大半は,まさにこのようなケースで,滞納期間としては,比較的長期(1年半~2年以上)に及んでいるケースがほとんどではないかと思っています。私の場合はといえば,滞納額がそれほど多くない場合でも相談を受け事件として受任することも勿論ありますが,受任する事件としては滞納額が多額に上る場合の方がやはり多いです。
滞納額が多額に上るケース,つまり回収困難案件については,弁護士名での督促書を内容証明郵便で発送することもありますが,素直にこれに応じた支払はなく,そればかりか連絡すらないことがほとんどです。
そのため,管理組合による督促の経緯,督促に対する滞納者の対応,滞納期間といった個別具体的な事情にもよりますが,直ちに法的措置(訴訟)をとることも多いです。訴訟提起により解決できない場合には,事案に応じた強制執行を行い,最終的には区分所有法59条の競売請求訴訟を提起することもあります。
長期滞納案件については,多くの遅延損害金を付加して請求できる場合がほとんどです。遅延損害金を付加して回収できる場合には,回収した損害金で弁護士費用を補える例も少なくありません。
遅延損害金で弁護士費用を補える例もありますので,管理組合がご自身で裁判外(或いは裁判上)で和解する場合や,法的措置(支払督促,通常訴訟)をとる場合には,遅延損害金の取り扱いに注意して頂けばと思います。遅延損害金を無条件で放棄する和解をしてしまっていたり,計算が複雑で難しい,面倒などの理由でそもそも遅延損害金を請求していない例も中には見受けられます。裁判外(或いは裁判上)で和解する前,法的措置(支払督促,通常訴訟)をとる前には,一度,弁護士に相談することをお勧めします。
【 滞納管理費等回収事件の弁護士費用 】 ※以下,全て税別
1 (通常)訴訟
管理費・修繕積立金の滞納分に加え,これらに対する遅延損害金,ケースによっては,将来分の管理費・修繕積立金,さらには違約金規定が存在する場合には,当該違約金(督促費用,弁護士費用等)の支払を求め,裁判所に提訴します。
(1)着手金 10万円
(2)報酬金 回収額(和解額)×20%
(3)実費 5万円
※お預かりした実費につきましては委任終了時に精算します。
2 強制執行(預貯金債権,給料債権の差押等)
上記訴訟において,被告が欠席した場合,出頭しても和解等により解決しなかった場合,獲得した勝訴判決(債務名義)をもとに強制執行を行います。
(1)手数料 10万円
(2)実費 上記1でお預かりした実費をそのまま流用致します。
※不足が見込まれる場合には改めて実費をお預かりし,委任終了時に精算します。
3 区分所有法59条の競売請求訴訟
上記強制執行が功を奏さないような場合で,他に手段がない場合には,競売請求訴訟を裁判所に提訴します。なお,勝訴判決を獲得した場合には,同判決に基づく不動産強制競売を申し立てることになります。
(1)着手金 20万円
(2)報酬金 回収額(和解額)×25%
(3)(勝訴した場合)不動産競売申立手数料 10万円
(4)実費 上記1,2でお預かりした実費をそのまま流用致します。
なお,不動産競売申立において特に必要となる実費は以下のとおりです。
a 予納金
裁判所に納めるもので,売約金で充当され,最後は返却されます。対象物件の評価額により,60万円からです(評価額が2000万円未満の場合は60万円)。
b 登録免許税
職権による差押登記の費用です。対象物件の評価額の1000円未満を切り捨て,これに1000分の4を乗じて100円未満を切り捨てた金額。
滞納区分所有者が物件を貸し出し賃料収入を得ているような場合には,当該賃料債権を差し押さえることも可能です。これは訴訟手続等を経ることなく(債務名義が無くとも)先取特権に基づき行うことができます。
また,当該物件に抵当権がついていないなど,競売を行えば配当(余剰)が見込まれるような場合には,不動産競売を申し立てることも可能です。これも訴訟手続等を経ることなく(債務名義が無くとも)先取特権に基づき行うことができます。
(1) 着手金 10万円
(2) 報酬金 回収額×15%
(3) 実費 3万円
※お預かりした実費につきましては委任終了時に精算します。
なお,不動産競売の場合には,(3)の実費の他に,上記3と同様,不動産競売にかかる実費がかかります。