マンション問題解決の手引き

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弁護士 加藤貴士



マンション内の騒音問題~騒音の立証

マンション内の騒音問題に関する訴訟においては,基本的には,不法行為に基づき損害賠償の支払を求めいくことになります。争点としては,受忍限度を超える騒音の有無です。では,受忍限度を超える騒音があると裁判所に認めてもらうためには,どのような立証をしなければならないのでしょうか。

 

受忍限度を超え不法行為が認められた事例では,騒音計マイクロホンを設置し,騒音を測定することで数値化し,騒音を目に見える形にした証拠が提出されております。何年何月何日,何時から何時まで,○○dBの騒音が測定されたという測定結果が証拠となります。これにより,客観的な騒音の有無,およびその程度を立証することができ,裁判所に対してアピールをすることができます。これに対し,居住者や近所の人の供述はどうかというと,主観的な感覚が入り込む余地が多分にあり,どの程度の騒音なのかが非常に特定しにくく,裁判所に対するアピールとしては全く不十分だったりします。

ただ,注意しなければいけないのは,騒音計で測定するにしても,素人が独自の方法で行った測定結果については信頼性に欠けると判断される可能性がある点です。いかなる機種を使い,いかなる状況の下で使用し,いかなる方法によっていかなる音を採取したものでるかどうかを明らかにする必要があります。専門的知識・技術の裏付けのある測定結果の方が,信頼性があり,証拠としての価値は高いと判断されることになるでしょう。

 

一例として,客観的な証拠の提出がなく,受忍限度を超える騒音の事実を証明することができなかった事例を以下でご紹介します(東京地裁平成3年11月12日・平成2年(ワ)第13944号)。

被告は,原告の真上の階に住み,幼い子を含めた子・妻の5人と共に住んでいたました。昭和45年に新築されたマンションで,被告家族は平成に入り上階に転居してきており,転居に際し,床をフローリングに変えました。床をフローリングに変えたこともあり,入居後,子供達が椅子などから飛び降りたり,部屋の中を跳びはねかけずり回ったりする音が酷く我慢の限界を超えているというのが原告の主張です。

家族構成からすれば,幼い子を含めた4人の子どもたちが家中を飛び跳ねたりかけずり回ったりすることは容易に想像できるところです。ただ,結論的には原告の上記主張は認められませんでした。「原告は,受任の限度を超えた騒音が反復的かつ長時間にわたって発生しているとして,…(証拠)…を提出するようであるが,右各号証に記載された原告のいう騒音がどの程度のものであったかを認めるに足る証拠はなく,それが受任の限度を超えているかどうかを判断することもできない」と判示されているところからすると,原告は,上記騒音計での測定などはしておらず,騒音を数値化した証拠は提出しなかったのだと思います。

判決では,子どもたちが家中を飛び跳ねたりかけずり回ったりする音について,性質上必ずしも長時間にわたって続く音ではないこと,20年以上も前に建築されたマンションであること,原告自身も本件マンションで2子を育てあげていることなども考慮されており,計測結果の提出により,180度結論が変わることになったかはもちろん不明ですが,幼い子も含め4人の子がいることや,原告の主張によれば,夜中2時ころまで騒音が発生していたこともあったことなどからすると,計測結果によっては受忍限度を超えていたと認定されていたかもしれません。或いは,自己に有利な形での和解に持ち込むこともできたかもしれません。

騒音問題の訴訟において,騒音被害を裁判官に共感してもらうためには,騒音の数値化は必須といえるのではないでしょうか。

なお,この裁判例では判決の最後に付言が残されております。おそらくではありますが,証拠上原告の請求を認容することはできないが,相当程度の騒音があったのであろうということを前提に,被告は十分注意して日常生活を送るべきであるし,他方,原告も,ある程度のことは大目にみることが望まれる,と原被告を諭す内容となっています。相隣関係の基本理念を改めて確認するところです。

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