マンション内で起こる名誉毀損問題
マンションに関わる事件のなかには,名誉を毀損されたとして不法行為に基づく損害賠償を請求するケースがあります。
管理組合の役員がらみでの名誉毀損事例が多いといえます。例えば理事長の権限逸脱などの行為を非難する発言や文書の配布が名誉毀損にあたるのではないか,といったケースです。ただ,この他にも,理事長に管理費を滞納した事実を公表された(例えば,個人名を出して総会の議題として取り上げられた)ので,名誉毀損を請求するといったケースもあります。
機会があれば,個別具体的な事案について紹介したいと思いますが,名誉毀損を原因とする損害賠償請求が認められるか否かは,名誉の毀損(社会的評価の低下)に該当することを前提に,違法性が阻却されるか否かがポイントとなります。
裁判例に当たってみて感じることは,真にマンションのためを思って行動している人は,結局法によって保護されることが多いということです。逆に言うと,私的な感情にとらわれたり,自分だけが得をしようとすると,結局法によっては保護されないということです。
では,理事長の職務に関して物言いたい場合に,名誉毀損だと言われないようにするにはどうすればよいでしょうか。
やはり過激な表現で,役員の立場についてではなく,個人的な批判・攻撃がメインとなっているような場合には,名誉毀損となりやすいので注意が必要です。また,憶測,噂などで発言するのも,真実ではない事実を表現することになりますので注意が必要でしょう。
逆に,役員の立場から,名誉毀損などの紛争が起こらないようにするにはどうすればよいでしょうか。
当たり前のことですが,理事(長)としての職務をきちんと執行することが必要です。修繕工事などにまつわるリベート,身内に有利になる措置はもっての他ですが,やはり私利私欲を疑われるような行動は,他人の批難を招く原因となりますので,できる限り避けるべきでしょう。